日大生産工学部建築工学科

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先輩を訪ねて①:豊永 悠一/株式会社 博報堂プロダクツ(2010年大学院卒業)

カテゴリ :
大学院
更新日時 :
2010年09月24日

レポーター:小山 光香(H21年度入学)

toyonaga1.jpgはじめに

3年生になってゼミナールがはじまり、研究室という新しい環境に所属するようになって今まで以上に将来について先輩や友人と考える機会が増えました。入学時からずっと興味を持ち続けている建築設計の道に進むべきか、あるいは他にもっと自分に合った進路があるのだろうかと悩み始めたとき、研究室の先輩からイベント企画のお仕事をされている豊永さんの話を聞く機会があり、強く興味を引き付けられました。直接お会いしていろいろお話を聞きたいと研究室の先生に相談したところ、インタビューの内容を学科ホームページで紹介するという役目をもらって、今回の訪問が実現しました。

豊永悠一さんは、平成22年春に生産工学研究科を修了し、「株式会社博報堂プロダクツ(以下、博報堂プロダクツ)」に就職されました。博報堂プロダクツは、広告代理店大手である博報堂の関連会社で、プロダクツという社名が示す通り、企業が商品を売るために行う様々なプロモーション活動にまつわる企画・制作・実施をする総合制作事業会社として、平成17年にそれまであった3社の関連会社を合併して設立された会社です。イベント会場の設計から設営も行うため、一級建築士事務所として登録しており、建設業法免許や警備業法認定も取得されているとのことです。

企業のオフィスを訪問する機会は初めてということで少々不安もあり、研究室の先輩で豊永さんとも面識のある大学院生の三代川さんに同行してもらい、東京赤坂にあるオフィスを訪ねました。業務柄、執務室では得意先の機密情報などを多く扱っているため、今回は執務室外の会議室でのインタビューとなりました。入学式以来のスーツで身だしなみを整えて臨んだインタビューは、思いのほか緊張しました。豊永さんはとても気さくでサバサバした印象の方で、何よりお話しの上手さに感心しました。準備して行った質問には、私の緊張を解すように雑談を交えて丁寧に答えていただきました。

インタビュー

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三代川:

さっそくですが、博報堂グループには「博報堂プロダクツ」をはじめ様々な会社がありますが、これらの中で御社はどのような位置付けなのですか?

豊永:

博報堂グループにおいて、博報堂プロダクツは総合制作事業会社として、企業が商品を売るために行う様々なプロモーション活動にまつわる企画・制作・実施を担っています。営業・プランニング機能を有した事業本部を中心に、広告制作の専門性に特化した12の事業本部が連携し、企業の課題解決にあたっています。

小山:

豊永さんは具体的にどのような業務をされているのですか?

豊永:

博報堂プロダクツには、フォトクリエイティブ、企画制作、CM制作、印刷、プレミアム、店頭プロモーションなど、いろいろな事業本部があるけれど、自分はその中でも、商品PRに関するイベントの企画や運営を手掛けるイベントプロモーション事業本部というところに所属しています。まず、商品がどういう人たちをターゲットにするか,どういうPRをしていくかといった商品販売戦略の方向性をプランニング部門が決めていて、その後、自分たちの事業本部がその方向性に従って具体化する方法を検討します。例えば、全国数か所で商品PRのイベントをしようという戦略に対して、具体的な場所や会場の仕様を決定していく。

小山:

イベントとは、具体的にどういったものなのですか?

豊永:

ホテルなどの会場で行う新商品発表会や、商品を消費者の方々に実際に手にとって触ってもらうための街頭イベントなど、いろいろだね。

小山:

会場の仕様を決定するということは、設計図面を描くということですか?

豊永:

決められたコストで要求したクオリティ,例えば会場の内装のクオリティなどが得られているか品質管理を行うことがメインの仕事で、図面を描いたりすることもあります。どこまで詳細を自分たちで決めるかはプロジェクトや担当者ごとにやり方が違うけれど、自分の場合は建築出身で図面を描くことができるので、コンセプト図面やスケッチを描いてある程度まで自分で空間イメージを具体化するようにしている。多分野の人との打ち合わせで意思疎通をするにあたって、説得力のあるプレゼンが出来るのは建築を学んだ自分の強みだね。

小山:

その他の業務内容として、どんなことがありますか?

豊永:

イベントに必要なスタッフの手配も行ったり、ショールームの企画を行ったりするケースもあるよ。

三代川:

豊永さんは入社後にどれくらいの案件に関わってこられたのですか?

また、一日のタイムスケジュールはどんな感じなのですか?

豊永:

インタビューで聞かれるかなって思って数えてみたよ。入社後一年目で関わった案件は約50件!忙しかったなぁ。

一日のスケジュールとしては、忙しい時には午前中はメールのチェックと返答で終わるかな。午後も18時くらいまで会議や打合せが多い。その後決まったことを関係者にメールで連絡して、それが終わるのが20時頃。そこからようやく自分の作業時間になって企画のアイディアを考え始められる、なんて時もあるよ。資料作りなどは基本的に空いている時間を見つけてやっています。

小山: とてもハードですね…。

三代川:

社会人はやはり学生よりもずっと忙しいですね。

なぜこの職業を選んだのですか?

豊永:

そうだなぁ…。短期間で幅広い業種や分野の人たちと関わって仕事できるからかな。博報堂プロダクツはいろいろな業種のクライアントを担当しています。その時々で企業の要望や売りたいものも全く違う。その都度、新しい人脈ができる。

就活時は、インテリアや設計の企業も受けたのですが、インテリアや設計の仕事は、ものづくりの中でも「設計」というプロセスに特化していて、就活を通して自分はもっと広い視野でものづくりに携わりたいと考えるようになり、広告業界に関心を持つようになった。誰かと何かを作り上げるという点では、設計の仕事も広告の仕事も同じだね。

小山: 仕事の一番の魅力はなんですか?

豊永:

仕事を選んだ理由と同じ答えになってしまいますが、幅広い業種・人との関わり合いで一つのものをつくりあげていくこと。この達成感や感動は、仕事でつらいことがあっても、それを超えるものがあるよ。イベントや新商品に関する仕事は次々とでてくるため、短い期間でかなりの経験値が積めて世界観も変わります。自ずと計画性・全体を見る力・判断力が養われていく。

三代川:

僕たち学生も、チームで設計コンペに参加したり、ワークショップで知らない人と一緒に一から何かを作りあげたりしたときにものすごく達成感を得ますが、それと似ていますよね。ただ、学生と社会人では同じくモノを作り上げていくといっても本質的に違うことも多いと思います。同じモノづくりを行っていても学生と社会人では決定的に違うと感じることは何ですか?

豊永:

そうだね…。やっぱり社会的責任かな。法律とか、いろいろ制約が関わってくるからその辺もしっかり考慮して物事を考えなくてはならない。あと、学生の頃ってとにかく自分の価値観だけで行動しても許されるよね?でも仕事になるとそうではなくて、相手の要望にどう答えるかという相手側の視点でアイディアを考えていく。打ち合わせで決まったことを積み重ねていくことではじめてアイディアが受け入れられることが学生との大きな違いだと思う。

小山:

確かに、自分の価値観だけで設計を行っているかも!

豊永:

学部生の頃はそれでいいと思うよ。むしろ自分自身を知らなくては何もできないからね。

三代川:

私が学部生のころ、豊永さんは大学院生で忙しそうにされていた印象をもっているのですが、学生の頃はどのように過ごしていましたか?

豊永:

ひたすら設計をしていたね。あとは自分の楽しいと思うことを見つけるためにいろいろな活動をしてきたかな。自分の考えを表現する設計の活動は、自分を客観視することに役立ったと思います。

大学院生の時には研究室のHPを制作したことをきっかけに、店舗のHPを立ち上げる仕事を受けたりしていました。これらの活動を通して、人と人との関わり合いで仕事がもらえるのだと実感しました。

小山:

私はまだ、自分が将来なにをしたいか決まっていなくて、広告業界やディスプレイ業界に目を向け始めたところなのですが、広告やディスプレイ業界で建築を学んだことの強みをどうやって活かせるのか、具体的にイメージができません。これらの業界に対しては個人的に文系のイメージがあって、飛び込んでいいのか自信を持ちきれないです。

豊永:

広告業界にも建築出身は結構いるよ。営業系にもたくさんいる。建築工学科で学んでよかったなって思うことは、自分なりのコンセプトに対する切り口の提案や表現の仕方が身についたってことかな。博報堂プロダクツには、いろいろな学科出身の多様な考え方の人材が揃っています。会議やミーティングでは、建築を学んだことを活かして自分なりのプレゼンの仕方で相手に自分の提案を伝えています。たまに模型を作ることもあるよ。図面や模型はやっぱり考えていることがストレートに伝えられるよね。

小山:

そうですか!なんか少し安心しました。

豊永:

でも、建築の知識や技術をただ身に付ければいいわけじゃない。必要条件になるかも知れないが十分条件ではない。

小山:

と言いますと?

豊永:

後輩たちにはもっと外部に視野を向けるようにアドバイスしたい。「建築」という枠組みにとらわれないで、いろいろなことに挑戦して経験値を高めてほしい。新しいことをはじめる最初の一歩を踏み出すことって勇気がいるけどね。

小山:

いつも何かしたい、何かしなくてはって思っていても、思うだけで終わっちゃいます。一歩を踏み出す勇気って難しいですね。

豊永:

でもその一歩を踏み出すと世界観も変わるし、必ずその次の一歩に繋がるよね。

三代川:

研究室で夏に他大学と合同でゼミ合宿を行っているのですが、そのような新しい人々と交流の機会を持つだけでも随分価値観が変わりました。実施設計にも携わっているのですが、同じ建築の問題も実物を作るという視点からは、演習課題の設計とは全く違う価値観が見えてくる。新しいことにチャレンジしたとこが、今まで気にもしなかったことを考えるきっかけを与えてくれています。

最後の質問になりますが、仕事に対する豊永さんの目標を教えてください。

豊永:

そうですね…。入社以降、イベントプロモーション、スペースプロモーションの仕事させてもらっていますが、まずはその分野のプロフェッショナルになりたいですね。まだまだ仕事を覚えている途中ですが、自分なりの仕事のスタイルを作り上げていきたいと考えています

 

最後に

今回のインタビューは、私にとって自分と向き合う大きなきっかけになりました。建築を学んでいるのだから建設関係の職に進むものだと思い込んでいたのですが、豊永さんのお話を聞いて、建築を学んだことを活かせる道がまだ自分の知らないところにあることを考えるようになりました。このインタビュー後、早速、少しずつですが自分の可能性を広げるために、いろいろな活動に積極的に参加し始めています。まだ小さな一歩ですが少しずつ視野が広がっていく実感もあり、この小さな一歩を踏み出せたことが自分を成長させてくれると信じています。そして、仕事の苦労話さえ楽しそうに話す豊永さんのように、自分の天職だと胸を張って言える職業に巡り合えるように、残りの大学生活を過ごしてきたいと考えています。

最後に、今回のインタビューのために貴重なお時間を取っていただいた豊永さんに心よりお礼を申し上げます。

(2011年8月16日博報堂プロダクツ国際新赤坂オフィスにて)

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左から筆者,豊永さん,三代川さん

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