日大生産工学部建築工学科

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先輩を訪ねて②:石川恵悟/LINE株式会社(2009年大学院卒業)

カテゴリ :
大学院
更新日時 :
2009年03月25日

レポーター:高野 隼, 柞磨優樹(H22年度入学)

はじめに

就職活動に向けた企業研究を進めていく中で、学んできた建築のデザイン力や企画力を活かすことの出来る建設業以外の業種に興味を持つようになりました。先生に研究室のOBで、現在IT業界で企画の仕事をされている石川恵悟さんを紹介していただき頂き、職場にお邪魔してお話を伺うことができました。

石川さんが勤務するLINE株式会社は、スマートフォンのコミュニケーションアプリ『LINE』でおなじみのIT企業です。韓国最大手のインターネット検索ポータルサイト『NAVER』を運営する"NHN Corporation"の日本法人"(旧)NHN Japan株式会社"を前身とし、ウェブサービス事業を行う"LINE株式会社"とゲーム事業を行う"NHN PlayArt株式会社"に分割されて誕生した会社です。

石川さんと面識がある大学院生の阿部さんと福島さんにも同行してもらい、今話題のスポットである「渋谷ヒカリエ」の中にあるオフィスを訪問してきました。27階のオフィスからは東京の街を眼下に一望することができ、白シャツに青い短パンというとてもカジュアルな服装で現れた石川さんの姿からも、就職活動で他の企業を訪問した時とは違うIT企業独特の雰囲気を感じました。石川さんはとても気さくに笑い話も交えながら私達の質問に丁寧に答えて下さったため、終始リラックスしてインタビューをすることができました。

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インタビュー

高野:

まず初めに、石川さんが現在勤務されているLINE株式会社はどのような事業をされている会社ですか?

石川:

LINE株式会社では、世界230カ国で利用されている無料通話・無料メールアプリ『LINE』を筆頭に、検索サービス『NAVER』、 キュレーションプラットフォーム『NAVERまとめ』、総合ニュースサイト『livedoor ニュース』、 国内最大級のブログサービス『livedoor Blog』といったWebサービスを展開しています。

柞磨:

石川さんは具体的にどのような仕事を担当されているのですか?

石川:

LINE株式会社には、営業職,企画職,デザイナー,エンジニア,エディターといった部署があって、その中の企画職という部署に私は所属しています。企画職の役割は、サービスの全体像を考えながら、サービスを成長させていくことです。主に、会社が提供する様々なサービスに対するユーザーの反応をチェックし、どの機能が評価されていていどの機能が必要ないのかを見極めて、新しい機能の拡張や追加を提案していきます。機能をただ追加していくだけでは良いサービスに発展させられない場合もあるので、時にはまったく新しいサービスとして立ち上げることが必要になることもあります。その判断はとても難しいですが、そこがやり甲斐でもあります。

福島:

建築系出身でIT業界に勤めるというのは珍しいと思うのですが、他にも社内に建築系出身の方はいらっしゃるのですか?

石川:

うちの会社では聞いたことないですね。恐らく自分だけだと思います。IT企業というと、情報系の大学や専門学校の出身者が働いていると思いがちですが、意外にもWEB系を専門に学んできた社員は少なく、本当に色々な分野の出身の方が働いています。別の業界でキュアリアを積んできた方も多く、例えば、広告代理店から転職して戦略チームでPR担当をしている方や、エンターテーメント業界の出身でサービスのディレクターをしている方もいます。

阿部:

石川さんは、現在どのような仕事に携わっているのですか?

石川:

『LINE』に連動する『LINE camera』というカメラアプリの企画を担当しています。LINE cameraは誰でも簡単に楽しく編集ができるカメラアプリで、撮影した写真をLINEのスタンプ機能(テキストメッセージにイラストを挿入する機能)で使われている1000種類以上のキャラクターを用いて加工でき、加工した写真をLINEユーザーで共有することもできます。どうしたら利用者が簡単に使えて楽しんでもらえるかということを第一に、どんな機能や編集用のコンテンツを新たに追加したらいいだろうかと考えています。アプリで問題が見つかった場合に、その修正がちゃんとできているかを確認することも自分の仕事です。

福島:

一日は仕事の流れはどのような感じですか?

石川:

裁量労働制なので、出社時間や勤務時間数は特に決まっていません。期日までにちゃんと成果物ができることが重要で、時間の使い方については各自に任せられているので、とても自由な感じです。自分の場合、出社すると最初に社内のカフェにコーヒーを買いに行って、それを飲みながらメールの確認することから一日が始まります。連絡のほとんどがメールで行われるので、メールの確認はとても重要です。メールの確認が一段落すると、順次溜まっている企画の改善内容を検討したり、新規の企画を確認したりといった感じです。

柞磨:

どのような人たちと組んで仕事をしているのですか?

石川:

私のプロジェクトでは、ディレクター業務を兼任する企画職の自分以外に、デザイナー,エンジニア,広報がチームを組んで一緒に仕事をします。デザインが完了したら、すぐに開発が作業に取り掛かれるように段取りをするなど、プロジェクトメンバーが働きやすい環境を作ることが企画職の仕事になります。それぞれのリソースやスケジュールを互いに管理しながらプロジェクトを進行するのですが、その調整はなかなか大変です。

外資系企業ということで、私のプロジェクトメンバーにも外国人が多く、言葉の壁で苦労することも多々ありますが、翻訳ソフトや英語を駆使して、何とか乗り越えています(笑)。職種や国籍など、さまざまな価値観を持ったメンバーと仕事をすることは、刺激を受けることが多く思い掛けない発見もあってなかなか楽しいですよ。

高野:

学生時代の話になりますが、大学で建築を学ぼうと思ったきっかけを教えてください。

石川:

はやくからデザイン系の大学に進学したいとは漠然と考えていました。高校が日大の付属高校だったということもあり、日大の中でデザインを学べる工学系学部の建築学科か芸術学部が進学先の候補でした。アートを鑑賞することは好きだけど、かといって芸術家のようなこだわりが強すぎる人になりたいわけではなかったので、芸術は無いかなぁと思って(笑)。建築家は多くの人々に受け入れられるデザインを目指す点で、芸術家よりも自分の性に合っていると思い、最終的に建築の道を選びました。建築は芸術よりも生活と直接的に関わる分野であることもいいなぁと思った。

阿部:

確かに、建築を学んでいると、自分本位ではなく利用者をはじめとして建物に係るいろいろな人たちのことを理解することが大切だと痛感します。

石川:

そうそう。だから、小さなプロダクトのデザインよりも、社会性を重視する建築のデザインを学ぶ方が楽しそうだと思った。

福島:

大学生時代は、普段どのように過ごししていましたか?

石川:

学部から大学院までの6年間、ずっと実家の静岡のから新幹線通学をしていたので、ものすごく多くの時間を新幹線の中で過ごしました。一見、無駄のように思われるこの通学と帰宅の時間が、自分にとってはとても貴重な時間だったと思います。一人になって集中していろいろなことを考える時間になったし、規則的な生活パターンの中で効率的に時間を使うことができました。また、静岡まで帰る途中に必ず東京を経由するので、よく寄り道をしたことが見聞を広げる上で役立っていたと思う。設計の課題でアイディアを練っているとき、寄り道で偶然目にしたものに影響を受けることも多かった。

柞磨:

建築を学んでいた石川さんが、IT業界に就職することになった経緯を教えて下さい。

石川:

大学生時代に簡単なホームページの制作に関わる機会が何度かあり、比較的早い段階からWEB系の仕事には関心を持っていました。業界について少しずつ知識が増えていく中で、特にITを使った新しい事業の企画に興味を持つようになって、段々と自分の将来の進路の選択肢として考えるようになりました。

高野:

進路の方向性を具体的に決めたのはいつ頃ですか?

石川:

具体的になったのは就職活動を開始する直前ですね。それまでは漠然と考えてはいましたが。具体的な企業を定めるにあたり、とにかく自分が興味を持った企業のサービスをユーザーとして体験してみることを心掛けました。そのとき、自分だったらもっとこうするとか、こう改善をした方がいいとか、気付いたことをメモするようにしていたのですが、こういうサービスを作りたいといった簡単な企画資料を作ってみることもありました。

柞磨:

建築という他分野からチャレンジすることに不安はなかったのですか?

石川:

建築の設計課題も、大きな意味では企画力を養う訓練だと思っていたので、大学で学んだことを活かす対象が違うだけと考えていました。建築を学んだ先にWebの分野をあたりまえのように含めて考えていたので、他分野にチャレンジするという意識はあまりなく、不安も特に無かったですね。専門的な知識が足りないところは当然あるとは思いましたが、それについては入社してから吸収していけばいいかなって考えていました。

阿部:

参考までに、就職活動では他にはどのような企業を受けましたか?

石川:

建築系学生の採用が多い広告代理店や制作会社にも興味がありエントリーしました。これらの会社にも企画の職があるのですが、企画職につくためには、まずは営業職からスタートするという場合が一般的でした。自分の場合、すぐに企画の仕事に携わりたいという想いが強くて、とにかく業界にこだわらずに分野を広げて就職活動をしました。その結果、幸運にも今の会社に出会えたという感じです。

この会社に入ってみてあらためて良かったと思うことは、とにかく、自分の意見が採用してもらえるチャンスが多いということ。自分がこうしたいという強い意思をはっきりと示し、チームのメンバーをきちんと説得することができれば、自分のアイディアが会社の提供するサービスに反映されます。もちろん全てのことが上手くいくわけではなく、上司や仲間とぶつかることも多々ありますし、自分のアイディアが採用されるためには相当の努力が必要です。

福島:

仕事は大変ですか?

石川:

建築を学ぶことって勉強していると言うよりは趣味みたいで、建築学生はキツい課題をその大変さを含めて楽しんでいる所があるよね。常に何か新しいことを考えている今の仕事も建築を学んでいたときと似ていて、苦労も含めて楽しめています。そういう意味では、自分は本当に仕事に恵まれていると感じています。カフェに行って雑談したり、芝生で寝ころがって休憩したりしながらアイディアを整理するのですが、学生のときみたいに自由なスタイルで仕事をできる社風が、仕事を楽しめている大きな要因ですね。

柞磨:

石川さんのような職種に就きたいと考えたとき、身につけておくべき知識やスキルがあれば教えてください。

石川:

本質的には、専門知識を持っているかどうかは全然関係ないと思いますよ。自分も、プログラミングが書けたわけでもないですし、ITに関する知識が多かったわけでもないです。同じIT業界でも、システムエンジニアとかソフトウェアの開発者になりたいのならば、それなりに専門知識が必要になってくると思いますが、企画職にとって不可欠な技術や知識はこれといって無いですね。あえて言えば、"考える力"ですかね。建築の設計課題って考える力を訓練する格好のプログラムで、その意味で建築系出身者は企画職に向いていると思います。建物の設計で「どうしてここに窓を付けるの?」「どうして屋根はこの形状でこの材料を使うの?」と考えることと、WEBの企画で「どうしてここにこのボタンが必要なの?」「どうしてこのボタンはこの形じゃなきゃいけないの?」と考えることは、機能や意味を考えながら物事を決めていくという点でとても似ています。建築デザインの基礎をきちんと習得てきていれば、きっとWEBの企画の仕事も違和感無くできるはずです。

高野:

最後に、後輩の学生へアドバイスがあればお願いします。

石川:

学生のうちは失敗を恐れずにやりたいと思ったことを積極的に行動に移した方がいいと思います。学生の間は、多少の失敗は周りも暖かく見守ってくれるので、とにかく好きなことに熱中して楽しんでおくことが、自分自身を磨く最善の方法です。たくさんの経験を通して自分が何をしたいのかを明確にし、私のように自分にあった素敵な仕事を見つけてください(笑)。

最後に

今回のインタビューを通して、建設業以外の業界にも建築を通して学んだ"考える力"を活かすことができる仕事があることを改めて実感することができ、就職活動に向けて視野を広けることの大切さを再確認することができました。ご多忙にも関わらずインタビューを受けて頂いた石川さん、このような貴重な機会を下さったLINE株式会社の方々に、この場を借りて心から御礼申し上げます。

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