日大生産工学部建築工学科

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「UR団地再生デザインコンペ」最優秀賞:藤田雄介(2005年建築総合コース卒業)

カテゴリ :
建築総合コース
更新日時 :
2005年08月03日

UR.jpg私は2005年に建築総合コース(坪井研究室)を卒業し、2007年に東京都市大学(旧・武蔵工業大学)大学院工学研究科を修了、手塚貴晴+手塚由比/手塚建築研究所に勤務した後、2010年からCamp Design inc.という建築設計事務所を始めました。これまでに、主に住宅や店舗のリノベーションの設計、展覧会などへの出展をしてきました。今年(2012年)5月に、UR都市機構主催の実施コンペ「UR団地再生デザインコンペ」で最優秀賞を頂きました。このコンペは、東京都足立区にある花畑団地の1棟を改修するアイデアを募り、最優秀案を実際に実現するものでした。現在「花畑団地27号棟改修プロジェクト」として、2013年の竣工を目指して設計を進めています。今回は、大学生の頃から現在に至るまでに、考えてきたこと等を綴っていきたいと思います。

「花畑団地27号棟改修プロジェクト」

 

続けることの先にあるもの

大学生の頃の自分を振り返ると、独立してやっていけるような優秀なタイプの学生ではなかったと思います。勉強については基本的に苦手で、設計は好きでしたが飛び抜けたものをつくれていた訳ではありませんでした。ただ、予備校生の頃から建築雑誌を立ち読みしたり、写真部に所属していたので展覧会のために写真を撮りにいったり、美術館をまわったり本を読むのは好きでした。大学の4年間は、そんな感じで気の向くままに色々なことを吸収しながら、設計課題に取り組むうちに過ぎ去っていきました。

卒業設計は、個人的には充実して楽しく取り組むことができましたが、結局賞をもらうことは出来ませんでした。内容そのものよりも、模型やプレゼンテーションの表現力が弱かったのだと思います。もしくは、展示された場所が悪くて先生方が見逃してしまったのでしょう(笑)。それは半分冗談で半分本気なのですが、実際に審査される状況や相手が変わると評価が一変することは往々にしてあります。大切なことは、設計課題や卒業設計で認められなかったからといって、「自分は設計に向いていない」とか「センスがない」と決めつけるのは早いということです。それと同時に、自分に足りていない部分・自分が変えなければいけない部分を客観的に見出して、次に結びつけることが重要なのです。自分に足りないものがあることは当たり前のことです。安易に自分を肯定したり、都合のいいように納得してしまわないで、今は足りていないことを恥じず知ることで先に進めるのだと思っています。

建築は、ほとんどの人が大学から始めるのでスタートラインは一緒です。幸いにも才能有る無しの世界でもありません。やればやるだけ成果の出るものだと思います。そして、一生続けても真に建築家と呼ばれる存在になれるかはわかりませんし、それだけ長い時間をかけて学び続けられるものです。大学の4年間は、ほんの始めの一歩でしかありません。やみくもに頑張るのではなく、続けることが大切なのです。日々の生活の中で、物事をよく観察したり、美しい気持ちいいと感じることを敏感に捉える。その積み重ねが、いつしか自分の建築観を築き上げていくのだと思います。

変わらないことの中にあるもの

ここまで私と建築との接し方を話してきたので、最後に具体的な建築の話をしたいと思います。先程ふれた卒業設計では、吉祥寺にあるハモニカ横町の建替え案を考えました。今のまま残せるのが一番よいのですが、将来的に老朽化によって建替えなければいけなくなったことを想定した計画です。ここは非常に独特の濃度をもった場所で、路地と店の間口の狭さが構造となり、その質を生み出してると考えました。それらを残したまま、新たに店同士の交点を切り欠いてもう一つの路地をつくりました。振り返ってみると、全て1からつくり上げるのではなく、場所の構造を見つけて最小限の手立てで最大限の効果を引き出す。そういうつくり方は、現在のプロジェクトにも通じるものがあります。

独立後は、偶然にもリノベーションの仕事を多く頂き、試行錯誤を重ねてつくってきました。そんな中で、「UR団地再生デザインコンペ」で最優秀案として実現できる機会を頂きました。ここでは、築46年の躯体と年月を経て育まれた素晴らしい環境を活かしながら、内外に木製建具を用いて多様性に溢れた建築に生まれ変わらせる、という提案を行いました。このコンペで求められていた内容と、実作を通して考えてきたものが上手く噛み合ったのだと思います。

建築を始めて12年間、様々なことを学んできましたが、本質的な部分つまり自分がどういう空間をつくりたいか、ということはほとんど変わっていないように思います。むしろ12年掛かって一回りして、ようやく何かが少し見えてきたのかもしれません。この文章を読んでくれた学生の皆さんも、長い時間をかけてじっくりと学び続け、建築という大きな存在と向き合っていって欲しいと思います。

(平成17年3月卒業(坪井研究室)) 

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▲卒業設計「2つの路地」                     ▲「翠ヶ丘の住宅」