日大生産工学部建築工学科

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「ひと」との関わりのなかで:本間 充一/株式会社本間總合建築(1983年建築総合コース卒業)

カテゴリ :
建築総合コース
更新日時 :
1983年03月30日

大学院博士前期課程を修了後、建設会社設計部にて主にコンペや大規模プロジェクトを経験し独立、以来12年あまりが経過した。いつも思うのは、建築設計とは「ひと」との出会い・関わりの中で成り立ち、つくられていくものだということである。自身の努力や研鑽は当然として、その時々に巡り会う「ひと」と「ひと」のなかで活動が起こり、結果となって現れるものが建築であると感じている。
 

「パインクリークヒルズ」

川崎市多摩丘陵の南斜面に、既存の大きな欅の樹を囲むように配置した9戸の集合住宅。画一的でない住戸の集合体をつくろうと、個性ある内部・外部空間をからませ、周辺環境との調和のなかで変化ある風景を創造し、集落のような空間づくりをめざした。独立後の始めての集合住宅であり、今でも忘れられない作品である。土地所有者である依頼主との対話と信頼関係から生み出された建築。建築は「ひと」との出会いから始まり、関わりの中で生まれるものだと実感したプロジェクトである。1999年に竣工、第44回神奈川建築コンクール住宅部門優秀賞を受賞した。
 

「コミュニティ再生型コーポラティブ住宅」

月に1回、仲間たちと始めた勉強会を発展させ、社会の諸問題を捉え解決の手法や方策を調査・研究し実践する組織をつくろうと、NPO都市住宅とまちづくり研究会を設立したのが2000年。その後、運良くすぐに第1号のコーポラティブハウス事業に千代田区神田地域で取り組むことができた。以後10棟のコーポラティブハウスが竣工、現在12棟目に取り組んでいる。

私達が目指す住まいづくりの基本理念は、
●地権者との話し合いからはじまり、地権者が主体となって事業をすすめる。住み続ける、商売を続けてもらうことが基本。多くの場合は、地権者の共同建替えにコーポラティブ住宅事業を組み合わせている。この為「コミュニティ再生型コーポラティブ住宅」と呼んでいる。
●住まいは「買う」ものではなく「つくる」もの。住まい手、設計者、事業のコーディネーターが協力し、すべての「ひと」の顔が見える関係のなかで共につくるものである。
●「人」と「人」のつながりを重視する。住む人同士、地域社会との、交流が大切。共同建替えでは元からの地権者がいるため、新たに住まう人達と地域社会との橋渡しの役割を担ってくれる。以上のような、コーポラティブ住宅事業方式をまとめて昨年本を出版した。

「コーポラティブハウスのつくり方」
知りたい・住みたい・つくりたい
NPO都市住宅とまちづくり研究会編 清文社刊

「ひと」と住まい、そしてまち、をつなぐ小さな取り組みではあるが、2003年には住宅金融公庫総裁賞。2005年(財)都市みらい推進機構主催、土地活用モデル大賞土地活用特別賞。
2006年都市住宅学会業績賞を受賞。これからの住まいづくり、まちづくりにつながる住まいづくりとして効果的な手法であり、意義ある活動だと評価を受けた。以上の活動は、勉強会に集まった仲間達、プロジェクトを任せていただいた地権者の方々、活動・事業を応援してくれる多くの人達との出会いやつながり・関わりのなかで、つくりあげてきたものである。

建築設計者に求められる役割は、時代とともに変化し幅が広がっている。大切にしているのは人との話し合いのなかで、ものをつくりあげていく姿勢だ。個々の設計においても、依頼主との対話は重要なものであり、コーポラティブハウスなどはまさに多くの「ひと」との共同と協同によりつくるものである。その為には設計者としての専門性はしっかりと確立させながら、多くの人をまとめあげていくコミュニケーション能力・コーディネート力が求められる。建築という枠のなかに留まらず、そのわくを広げていくことも課題だ。
建築設計を学び、志す人達にもこの点は伝えておきたい。発想、構想からものづくりははじまる。それを現実のものとして表現・定着させるには「ひと」との関わりの積み重ねがあり、かたちになる。またその作業が建築の質を高めていく。

これからもその行動、努力を続けていきたいと思う。
(昭和58年3月修了(神谷研究室))